村上龍著「愛と幻想のファシズム」より。
こいつらは簡単にだまされる。飢えているからだ。疲れて、参っている奴らは、たとえ嘘だとわかっていても暖かい光景に飢えているのだ。飢餓や混乱の経験がなく、いつも見慣れている風景が一瞬にして殺戮の廃墟と化すことがあると知らない奴らは、弱い。気付かない。暖かい心や言葉や光景は永遠のものだと信じていて、人間も風景もあっという間に変わってしまうのだと気付かない。
俺がヒューマニズムとセンチメンタリズムを敵視する理由はこの引用にも表現されている。
反吐が出そうな偽善民主主義ファシズムに覆われた、糞みたいな世界。こんな世界で奴隷ではない生き方で生きようとしたら、それこそ鈴原冬二のごとく、快楽とともに極限まで獲物を狙い、敵を見据えて戦う意志がなけりゃいけない。