村上龍著「愛と幻想のファシズム」より
システムに包囲されていることに変わりはないのだ。火星に移住しても同じだ。きっとウイッツもそのことを知っているはずだ。幻のエルクと同化するしかない。増殖するシステムの中心にいること、つまり支配するシステムを常に増殖させることだ。
1983年に書かれたこの小説の中で、村上龍は2022年を予言した。ここで言う「システム」が何を表しているか、今ほどリアルに、骨身に沁みてわかる時はなかっただろう。「システム」が、ここまで具体的に正体を表したこともなかった。奴らは、本気なのだ。
2022年の今、人類は「愛と幻想のファシズム」と「コインロッカーベイビーズ」と「フィジーの小人」と「だいじょうぶマイ・フレンド」と「5分後の世界」と「ヒュウガ・ウイルス」が、混沌と混ざり合いながら具現化した世界に生きている。(これに、少し昔に公開された和製SFエログロホラー映画「アナザヘヴン」を加えてもいいな、「時計じかけのオレンジ」もね)
この異常な世界。だけど俺は、鈴原冬二とキクとミズノ少尉を心に秘めて生き抜いてやる。