村上龍著「愛と幻想のファシズム」より

 

強者は嫌われない。ゴミのような人間達は、強者と同化したがるのだ。

 

馬の臓物も、猪の肉も、からだを腹の底から暖める。野生の肉は血管を拡げるのだ。俺達は湧き出すように汗をかく。

 

「その婆さんは、よく晴れた日に、二人の孫を連れて、山菜を採りに行ったんだ、そして虎に襲われた、ばあさんは棘のついた木の枝で虎の注意をそらしながら、飛びかかって、虎の耳を食いちぎったんだそうだ、そのばあさんのコメントは中国でも有名になった、圧倒的に強い敵にギリギリまで追いつめられた時、残された唯一の手段、それは戦うことだ、ばあさんは、そう言ったんだとさ」

 

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「圧倒的に強い敵にギリギリまで追いつめられた時、残された唯一の手段、それは戦うことだ」


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